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ドイツ仕込みのおいしい技術を、商品づくりに活かしています
下館工房の前責任者として携わる乾 真彰は、2001年と2003年にそれぞれドイツで約3ヶ月の研修を経験した後、2003年10月から、本場ドイツの国家資格『食肉加工マイスター』を目指して食肉店での修行をスタートさせました。
そんな彼が『食肉加工マイスター』を取得するまでの、ドイツにおける店での修行や養成学校での暮らしぶりなどを、ご紹介します。 |
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食肉店で技を磨き、養成学校で知識を習得
職人の国とも称されるドイツには、中世から受け継がれてきた国家資格、『マイスター制度』があります。乾が目指した食肉マイスターも、ベーカリー、大工などとともに今も続く41業種の資格のひとつです。 食肉加工マイスターになるためには、マイスターが経営する食肉店で修行し、養成学校で店舗経営、法律などの知識を学び、厳しい国家試験に合格しなければなりません。
乾は一年余り、食肉店2ヵ所での修行を積み、2005年1月から養成学校で約50人のドイツ人クラスメートと机を並べてきました。授業は早朝6時半から始まる日も多く、夕方5時までのハードスケジュール。 最初は「ドイツ語を聞き取るのが精一杯だった」という乾も、「テキストや先生の作ったプリントを徹底的に読み込んで、疑問点は先生やクラスメートにどんどん質問して教えてもらった」と話すように、努力を重ねて、理解していきました。 |
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言葉の壁を努力でカバー 見事マイスター証書を手に
マイスター試験は、実技、理論、店舗経営・法律、教育の4項目で、各筆記と口頭試問が行われます。 「実技試験では、たとえば、125kg以上の牛の半身を5時間以内で部位別に正しくきっちりと分けていくものや、ハムなどを大きなプレートに美しくデコレーションしていくものなど、多様なものでした」。 さらに、肉の扱い方や知識などハム・ソーセージに関することだけでなく、食品を扱う上で必要な食品法、店舗経営のための商法や労働法などの法律や、弟子を育成するための教育法まで、幅広い知識が求められます。
「ドイツの法律を覚えるのに一番苦労しました。でも、技術面は日本と修業先での積み重ねで、それほど不安はなかったので、養成学校での授業をきちんと理解できていれば大丈夫と自分に言い聞かせ、試験に臨みました」。 そして、2005年3月23日に見事合格。マイスター証書を手にしました。 |
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食肉加工マイスターの名に負けないように
乾は「マイスターのそばで一緒に仕事できたことで得られたものは本当に大きかったです」と、この1年半を振り返ります。「小売店では、常時50種類あまりのハム・ソーセージを並べています。毎日、何種類も作らなければなりませんが、マイスターはその仕事の段取りがすばらしいんです。肉のことを熟知し、膨大なレシピも頭に入っていて、それをスムーズに作る確かな技術があればこそ、仕事の段取りもうまくいくわけです。見習いたいことのひとつです」と、熱く語りました。
さらには、新しい商品へのヒントとなるような発見もありました。 「ドイツのソーセージは肉に皮を練り込んだものが多いんです。皮にはコラーゲンが豊富に含まれていいますから、女性の肌にもいいはずだと(笑)。日本でも皮付きの商品にチャレンジできたらと思います」。
現在、乾は「本場の伝統の技と知恵をできるだけ広く伝えていきたいと思っています。肉を一からさばき、それぞれの部位のおいしさを十分理解して、それを活かした製品をみんなで作っていきたい」と張り切っています。 |
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<マイスターとは>
マイスターは、中世以来ドイツで伝承されている手工業の徒弟制度で、1953年に法制化されたドイツ政府が認定する様々な職業における最高資格。日本語に訳すと、親方あるいは棟梁ということができる。この資格を取得すると、自ら店を開業することが出来、雇用条件も職人(ゲゼレ)の時よりも数段有利となる。制度運営は公的機関である「手工業会議所(Handwerkskammer)」が担っている。 現在では、41の手工業にマイスター制度が適用されており、食品に関する職業では、Fleischer(食肉および加工品)、Baecker(パン)、Konditoren(菓子)の三つのみ。その他、時計、鋳物、服、理容美容、建築、家具、建具、左官などがある。 マイスターは手工業の技術に卓越しているだけでなく、企画開発力、経営管理、雇用管理、労働法、後進育成、そして特に店の経営センスと人格を兼ね備えたものにしか与えられない称号。 |
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